慢性的な人手不足に悩む飲食業界において、2019年に創設された在留資格「特定技能(外食業)」は大きな役割を担っています。しかし、制度が複雑で「何から始めればいいかわからない」「手続きが面倒」と二の足を踏んでいるオーナー様も多いのではないでしょうか。
1.なぜ今、特定技能「外食業」なのか?
日本の飲食業界において、日本人だけでスタッフを確保するのは限界に達しています。これまで多くの飲食店を支えてきたのは「留学生(資格外活動)」でしたが、彼らには「週28時間以内」という厳しい就労制限があります。
そこで注目されているのが「特定技能(外食業)」です。
特定技能外国人は、一定の技能と日本語能力を持っていることが試験で証明されており、フルタイムで日本人正社員と同じように働くことが可能です。またステップアップしていくことにより単なる労働力の補充ではなく、将来の店長候補や戦力として期待できる制度なのです。
2.特定技能「外食業」で任せられる業務内容
外食業経営者または採用担当者にとって最も気になるのが「どこまでの仕事を任せられるのか?」という点でしょう。
2-1. メイン業務
| 飲食物調理 | 客に提供する飲食料品の調理,調製,製造を行うもの 例:食材仕込み、加熱調理、調味、盛付け、飲食料品の調製 など |
| 接客 | 客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの 例:席への案内、注文伺い、配膳、代金受取り、商品の受け渡し、食器・容器等の回収、予約受付、苦情等への対応 など |
| 店舗管理 | 店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの 例:店舗内の衛生管理全般、従業員のシフト管理、従業員の指導・研修に関する事務、予約客情報・顧客情報の管理、会計事務管理、社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整、食材・消耗品・備品の補充、発注、メニューの企画・開発、宣伝・広告の企画、店舗内外・全体の環境整備 など |
2-2. 関連業務
日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えありません。
関連業務に当たり得るものとして、例えば、次のものが想定されます。
- 店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
- 客に提供する調理品等以外の物品の販売
(注)専ら関連業務に従事することは認められません。
3.外国人本人の要件(誰を採用できるのか?)
特定技能「外食業」のビザを取得するためには、外国人本人が以下の2つの試験に合格している必要があります。
3-1. 技能試験
「外食業特定技能1号技能測定試験」への合格が必要です。 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施しており、衛生管理、調理、接客に関する知識が問われます。
※特定技能2号の場合:「外食業特定技能2号技能測定試験」および一定の実務経験が必要となります。
3-2. 日本語試験
以下のいずれかの試験に合格することが求められます。
- 日本語能力試験(JLPT): N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
※特定技能2号の場合:「日本語能力試験(N3以上)」が必要となります。
3-3. 技能実習生からの移行
「医療・福祉施設給食製造」などの関連する職種で技能実習2号を良好に修了した人は、上記の試験が免除されます。
上記以外の技能実習2号を良好に修了している場合、技能試験は免除になりませんが、日本語試験は免除されます。
4.受け入れ事業者(飲食店)側の要件
外国人労働者を雇うためには、受入機関側も以下の要件を満たす必要があります。
4-1. 特定技能共通の要件
- 労働条件(労働時間・報酬額等)が同種の業務に従事するフルタイム雇用の日本人と同等以上。
- 直接雇用であること(派遣形態は不可)。
- 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守している。
- 1年以内に受入れ企業の責めに帰すべき事由により外国人(技能実習生と特定技能外国人)の行方不明者を発生させていない。
- 財務状況が良好
- 違約金を定める契約等を締結していない。 など
4-2. 外食業特有の要件
- 飲食店営業許可などの必要な許可を受けていること。
- 風俗営業法の許可が必要な営業を行っていないこと。
- キャリアアップ計画の作成。
- 協議会へ加入していること。
5.「支援計画」の策定と実施
特定技能制度の最大の特徴であり、雇用主にとって高いハードルとなるのが「1号特定技能外国人支援計画」です。 特定技能1号の外国人は、生活や仕事にまだ不安があることが多いため、事業者は以下のような支援を行う義務があります。
| 項目 | 支援内容 |
|---|---|
| 1.事前ガイダンス | 労働条件、活動内容、日本での生活情報などの説明 |
| 2. 出入国する際の送迎 | 空港などへの送迎 |
| 3. 住居確保・生活に必要な契約支援 | 住居確保の支援や銀行口座開設の補助など |
| 4. 生活オリエンテーション | 円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナーなどの説明 |
| 5. 公的手続等への同行 | 住居地・社会保障・税などの手続の同行、書類作成の補助 |
| 6. 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等 |
| 7. 相談・苦情への対応 | 職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応 |
| 8. 日本人との交流促進 | 地域住民との交流の場、地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助等 |
| 9. 転職支援(人員整理等の場合) | 受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先支援等 |
| 10. 定期的な面談・行政機関への通報 | 支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談 |
「登録支援機関」への委託
これらの支援を自社で実施することが困難な場合、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」に支援の実施をすべて委託することができます。
6.採用から就労開始までのフロー
ここでは、すでに日本国内にいる外国人を特定技能として採用する場合(在留資格変更許可申請)の流れをご案内します。
- 人材募集・内定
- 登録支援機関との契約(委託する場合)
- 事前ガイダンス・健康診断
- 雇用契約締結
- 協議会入会など
- 在留資格変更許可申請
- 許可・在留カード更新
- 就労開始
7.特定技能2号
これまで外食業は「1号(最長5年)」のみでしたが、現在は、外食業も「特定技能2号」の対象分野に追加されました。特定技能2号は、1号よりも高い専門性と熟練技能を持つ外国人が対象の資格です。
主な特徴
- 在留期間:更新制限なし(無期限)
- 家族帯同:可能(配偶者・子ども)
- 雇用形態:企業との直接雇用
- 対象分野:現在は11分野のみ
- 技能レベル:実務経験と高度な技術を有することが前提
2号を取得した外国人は、現場リーダー・技能指導者などとして働くことも想定されています。また、2号へ移行すれば、将来的に永住権の取得も視野に入れた長期就労が可能になります。これは、優秀な外国人スタッフに長く働いてもらいたい外食業の事業者にとって朗報です。
8.まとめ
特定技能「外食業」制度は、外食産業の深刻な人手不足を補う即戦力として、今後ますます重要な制度となっていきます。制度の正しい理解と適切な運用により、企業と外国人双方にメリットのある雇用が実現します。
弊所では、特定技能をはじめとした各種在留資格申請についてサポートしております。外国人材の受け入れをご検討の企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

