特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、特定の産業分野において即戦力となる外国人材を受け入れるために創設されました。この制度を利用して外国人を雇用しようとする企業(「特定技能所属機関」といいます)は、制度の適正な運用を確保するために、出入国在留管理庁が定める厳格な基準(要件)を満たす必要があります。
本記事では、特定技能所属機関に求められる主な基準を、「雇用契約に関する基準」「企業(受入れ機関)自体の基準」「支援体制に関する基準」の3つの柱に分けて、詳細かつ分かりやすく解説します。
雇用契約に関する基準:日本人と同等以上の待遇を
特定技能外国人と企業が結ぶ雇用契約は、日本の労働関係法令を遵守していることはもちろん、外国人であることを理由とした不当な差別がないよう、特に以下の点において厳格な基準が設けられています。
① 業務内容の基準
特定産業分野に属する業務であること: 外国人は、特定技能の対象となる16分野(介護、工業製品製造業、農業、建設業、飲食料品製造業、外食業など)における、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事することが求められます。単なる単純労働のみに従事させることはできません。
② 報酬額の基準(最も重要な基準の一つ)
日本人と同等以上の報酬: 特定技能外国人の報酬額は、同じ事業所で同じ業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上でなければなりません。これは、外国人労働者を不当に安価な労働力として利用することを防ぐための、制度の根幹に関わる基準です。
③ 労働時間・休暇の基準
- 通常の労働者と同等の労働時間: 所定労働時間が、企業で雇用する通常の(フルタイムの)日本人労働者の所定労働時間と同等であることを要します。
- 一時帰国のための休暇: 外国人が一時帰国を希望した場合、必要な有給休暇を取得させることが雇用契約で明記されていなければなりません。
④ その他の不当な契約の禁止
- 違約金等の禁止: 労働契約の不履行や雇用終了に伴い、違約金や不当に高額な損害賠償額を定める契約を締結してはいけません。
- 保証金等の徴収禁止: 外国人本人やその親族等から、金銭その他の財産を管理したり、特定技能外国人の地位を利用して保証金を徴収したりすることは固く禁止されています。
企業(特定技能所属機関)自体の基準:法令遵守と適正な管理
特定技能所属機関となる企業は、コンプライアンスや過去の実績において、適格性を満たすことが求められます。
① 法令遵守の徹底
- 労働・社会保険・租税に関する法令の遵守: 労働基準法、社会保険、税法など、日本国内のすべての関係法令を遵守していることが必須です。未払い残業代の発生や社会保険の未加入などがあれば、特定技能外国人を受け入れることはできません。
- 出入国・労働法令に関する欠格事由への非該当: 過去5年以内に、出入国管理及び難民認定法(入管法)や労働関係法令(労働基準法など)について、重大な違反がないことが求められます。
② 過去の雇用管理における実績
- 非自発的離職者の未発生: 特定技能外国人と同種の業務に従事する日本人労働者を、過去1年以内に会社都合による解雇などの非自発的な離職をさせていないことが必要です。
- 行方不明者の未発生: 過去1年以内に、企業側の責任により、受入れ・管理していた外国人労働者を行方不明者として発生させていないことが必要です。これは、外国人の適切な管理・支援が行われているかの重要な判断基準となります。
③ 特定技能所属機関としての行為能力
- 暴力団員等の排除: 役員等が暴力団員等に該当しないこと。
- 行為能力: 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていない者など、適切な事業運営が困難と認められる欠格事由に該当しないこと。
支援体制に関する基準:外国人の日本での生活と業務をサポート
特定技能制度の大きな特徴の一つは、外国人に対する手厚い支援が義務付けられている点です。企業は、外国人が日本で円滑に仕事と生活を送れるよう、適切な支援体制を整える必要があります。
① 適切な支援計画の策定と実施
特定技能所属機関は、受け入れる外国人のための「特定技能外国人支援計画」を策定し、その計画に基づき以下の義務的支援をすべて実施しなければなりません。
| 事前ガイダンスの実施 | 入国前または在留資格変更前に、労働条件や生活情報、支援の内容などについて説明します。 |
| 出入国時の送迎 | 入国時と帰国時に、空港等への送迎を行います。 |
| 住居確保・生活に必要な契約の支援 | 住居の賃貸借契約や銀行口座の開設、携帯電話・ライフライン(電気・ガス・水道)の契約などの手続きをサポートします。 |
| 生活オリエンテーションの実施 | 日本での法令遵守、ごみ出し等の生活ルール、医療機関の利用方法、公的機関への届出方法など、生活に必要な情報を提供します。 |
| 公的手続きへの同行 | 必要な行政手続き(住民登録、税金、社会保障等)をサポートします。 |
| 日本語学習の機会提供 | 日本語能力向上のための学習機会を提供します。 |
| 相談・苦情への対応 | 職業生活や日常生活、社会生活に関する相談や苦情に、外国人本人が理解できる言語で対応します。 |
| 非自発的離職時の転職支援 | 企業側の都合で契約を解除する場合など、外国人が非自発的に離職した場合、次の仕事を探すための支援を行います。 |
② 支援責任者・支援担当者の選任
支援を適切に実施するため、企業は、役職員の中から支援責任者と支援担当者を選任しなければなりません。これらの担当者は、特定技能外国人への支援を円滑に行うための知識と経験を有していることが求められます。
しかし、支援に関する義務のすべてを登録支援機関に委託し、その登録支援機関が適切に支援を実施する場合は、受入れ機関側で支援責任者や支援担当者を選任する必要はありません。
まとめ:特定技能外国人受入れ手続きの全体像
特定技能外国人を受け入れる企業は、上記の基準を満たした上で、外国人との雇用契約締結後、出入国在留管理局に対し「在留資格認定証明書交付申請」または「在留資格変更許可申請」を行い、許可を得る必要があります。この際、企業がこれらの基準をすべて満たしていることを証明するための膨大な書類を提出しなければなりません。
| 要件の分類 | 主な具体例 |
|---|---|
| 雇用契約の基準 | 日本人と同等以上の報酬、違約金徴収の禁止、一時帰国のための有給休暇付与 |
| 企業自体の基準 | 労働・社会保険・租税に関する法令の遵守、過去5年以内の入管法等違反がないこと、過去1年以内の非自発的離職者の未発生 |
| 支援体制の基準 | 適切な支援計画の策定、支援責任者・担当者の選任、生活オリエンテーションや相談対応の実施 |
特定技能制度の利用は、企業に即戦力となる優秀な外国人材をもたらす大きなメリットがありますが、その裏側には、厳格な法令遵守と手厚い支援の義務が伴います。
これらの複雑で多岐にわたる基準の確認、必要な書類の作成、支援計画の策定、そして入管への申請手続きを一貫してサポートし、安心して特定技能外国人を受け入れられるよう尽力いたします。特定技能外国人受入れの基準や手続きについて、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

