特定技能制度は、日本の人手不足を解消するため、即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格です。この資格を取得し、日本で働くためには、原則として、特定の技能水準と日本語能力水準を証明する試験に合格する必要があります。

この記事では、特定技能の取得に必要な技能試験と日本語試験の種類、概要、および受験のポイントについて詳しく解説します。

特定技能制度の概要と試験の重要性

特定技能制度とは?

特定技能制度は、2019年4月に創設された制度で、日本の生産性の向上や持続可能性の確保に不可欠な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れることを目的としています。

この在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ在留期間や求められる技能水準が異なります。

特定技能の区分在留期間求められる技能水準家族の帯同
特定技能1号通算5年(上限)特定分野における相当程度の知識または経験原則不可
特定技能2号制限なし(更新可能)特定分野における熟練した技能可能

なぜ試験が必要なのか?

特定技能の在留資格を取得するための要件の一つが、「技能試験と日本語試験への合格」です。

  1. 技能試験:即戦力として働くために必要な、各分野の専門的な知識や実務能力を有していることを証明します。
  2. 日本語試験:業務上必要な日本語能力、および日常生活に必要なコミュニケーション能力を有していることを証明します。

ただし、技能実習2号を修了した外国人は、既に一定の技能水準と日本語能力があるとみなされ、これらの試験が免除されます。

特定技能1号 技能評価試験(特定技能試験)

特定技能1号の技能評価試験は、分野ごとに実施され、その分野で働くために必要な知識と実務能力を測ります。試験は、各分野を所管する省庁の指定を受けた団体が実施しています。

1.試験実施分野(16分野)

特定技能1号の対象分野は以下の16分野です。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 工業製品製造業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業
  13. 自動車運送業
  14. 鉄道
  15. 林業
  16. 木材産業

2.試験の構成と内容

多くの分野で、試験は学科試験(筆記・多肢選択式)と実技試験で構成されています。

試験の種類評価内容の例
学科試験各分野の基礎知識、安全衛生、専門用語の理解など
実技試験実際の作業手順、判断能力、工具の取り扱い、問題解決能力など

【例:飲食料品製造業】
学科試験:食品安全、HACCP、衛生管理、原材料の知識など
実技試験:手洗いや服装などの衛生作業、製品の計量・投入作業など

【例:介護分野】
学科試験:介護の基本、こころとからだのしくみ、介護技術など
実技試験:模擬的な状況設定のもとでの身体介護、コミュニケーションなど

3.受験資格と実施国

  • 受験資格:試験実施国の法令に基づき17歳以上であることなど、特定の要件が定められています。
  • 試験実施:試験は、日本国内および**海外(送り出し国)**でも実施されています。これにより、海外在住の外国人が日本に来る前に技能水準を証明することが可能です。
  • 言語:基本的には日本語で実施されますが、一部の分野や海外での実施では、現地の言語を併記または使用する場合もあります。

4.特定技能2号 技能評価試験

特定技能2号の取得には、1号よりも高い水準の熟練した技能を証明する必要があります。試験内容は、現場監督者やチームリーダーとして求められる、より高度な知識や判断能力、実務経験を問うものとなります。

日本語能力水準を測る試験

特定技能1号を取得するためには、業務上および生活に必要な基本的な日本語能力(日常会話に支障がなく、業務指示を理解できるレベル)が求められます。

これを証明するために、以下のいずれかの試験に合格する必要があります。

1.国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

JFT-Basicは、国際交流基金が実施する試験で、「特定技能」制度のために開発されました。

  • 目的:主に外国人が日本で生活し、特定技能の職場で働くために必要な日本語能力を測定します。
  • 評価レベル:A2レベル相当(簡単な日常的な会話や業務上の指示を理解し、やり取りができるレベル)を目標としています。
  • 試験方式:CBT(Computer-Based Testing)方式。コンピューターで受験し、その場で結果が出ます。
  • 構成:4つのセクション(文字・語彙、会話・表現、聴解、読解)で構成されます。

2.日本語能力試験(JLPT)

JLPTは、世界で最も広く知られている日本語能力を測る試験です。

  • 特定技能の要件:N4レベル以上の合格が必要です。
  • N4レベルとは:「基本的な日本語を理解することができる」レベルとされています。日常的によく使われる語彙や漢字を理解し、ゆっくりとした会話であれば、その内容をほぼ理解できる能力を指します。
  • 試験方式:年2回(7月と12月)実施される筆記試験です。
JLPTのレベル特定技能との関連
N1幅広い場面で使われる日本語を理解できる
N2日常生活で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる
N3日常生活で使われる日本語をある程度理解できる
N4基本的な日本語を理解できる(特定技能の要件)
N5基本的な日本語をある程度理解できる

3.日本語試験の免除

前述の通り、以下の条件を満たす外国人材は、日本語試験が免除されます。

  • 技能実習2号を良好に修了した者
  • 日本の高等学校、大学などを卒業・修了した者

受験の準備と合格のポイント

特定技能の試験は、単に知識を問うだけでなく、業務現場での実用性を重視した内容となっています。効率よく準備を進めるためのポイントをまとめます。

1.公式テキスト・過去問の活用

各分野の試験を実施する団体は、多くの場合、試験のガイドライン、テキスト、問題集などを公開しています。これらを活用し、出題範囲とレベルを正確に把握することが合格への第一歩です。

2.日本語は「業務で使う言葉」を中心に

日本語試験対策では、一般的な日常会話だけでなく、特定の分野で使われる専門用語や業務指示を理解できるように学習することが重要です。

  • 技能試験のテキストに目を通し、そこで使われる日本語表現や安全衛生に関する用語を重点的に覚える
  • 実際の業務現場を想定した会話練習を行う

3.実技試験対策

実技試験では、知識だけでなく手順の正確さ、安全性、時間効率などが評価されます。

  • 動画や資料で正しい作業手順を確認し、繰り返し練習する。
  • 安全衛生のルール(服装、工具の扱い、整理整頓など)を徹底して守る。

4.海外での受験機会の活用

海外で受験できる試験が増えています。日本に来る前に合格証を取得できれば、よりスムーズに在留資格の申請に進むことができます。

まとめ:即戦力としての活躍に向けて

特定技能の各種試験は、外国人材が日本で即戦力として安心して働き、生活するためのパスポートのようなものです。

合格は、単に資格を得るだけでなく、日本の職場で活躍できる確かな技能と、業務・生活に困らない日本語能力を持っていることの証となります。

企業側は、試験合格者がスムーズに職場に定着できるよう、入社後の実地研修や日本語学習のサポートを行うことが、特定技能人材の活用成功の鍵となります。